出汁の塩梅


サッと使いたい時には専ら、安くて沢山入ってて入手しやすいこれ。「かね七」のだしパック。余計な原料使ってないのが〇♪

 いやまぁ別にそこまで素材主義ではないんだけど、「本だし」とかの商品名で一般的に売られてる顆粒の「だしの素」ってのがどうにもおれには使いづらかったりする・・・・・・っちゅうのも初めから醤油や塩といった塩分が含まれちゃってるからだ。そのせいで味付けが却って分かりにくくなって却って面倒くさいのである。そりゃ湯に溶かすだけだから、なるほどそこはカンタンなんだけどさ。
 メーカーも殆ど意地になってるとしか思えないよね。「食塩無添加」って謳った顆粒タイプもちょっとは流通するにはしてる。ところがよく見ると成分には「でん粉分解物、酵母エキス粉末、麦芽糖」な~んて書いてあったりするんだな、これが。要は醤油系の味だけは付けてあったりするのだ・・・・・・塩味はないのに。そらちょっと不気味やで。フツーに出汁成分だけにすりゃエエのに。

 同じ理由で料理酒っちゅうて売られてるのも使いづらい。ありゃぁ古来の「煎り酒」とか「酒しお」みたいなんがルーツにあるんだろう。それで初めから塩やら他の旨味成分が入っちゃってるのだ。でもこれまたその分、味付が変に濃い方にブレるんで困る。
 だから2リットルパックの安酒を使うようにしてる。安酒っちゅうてもしかし、死ぬほど安い合成清酒は流石にアカンね。あれって一体全体何からできてるんやろね?「合成」っちゅうくらいやから、ケミカルな何かだとは思うんだけど、飲んでマズいのはともかく、料理にしてもこれまたマズいんだわ(笑)。ちなみにワインも白赤どっちも巨大な紙パックで流しの下の調味料棚に収まってたりする。ホントは同じ中身で割安な3リットルにしたいものの、棚に入らなくなっちゃうんで、仕方なく2リットルパックを買ってるのが実情だ。

 そんなんでうちではそれほど気合入ってない時はだしパック、ちょっと気合入れる時は古式ゆかしくかつお節、煮干し、昆布、干し椎茸等からチャンと出汁を取るようにしてる。
 前者は全然面倒ではない。強いて言うならちょっと早い時間から水に放り込むようにして、ゆっくり沸かして行けば、かなり良い出汁が取れる(但し、パックゆえの紙臭さはやはりある)。後者は厳密に言えば作る料理によって配合やタイミングがやや異なるが、まぁ割烹料理屋ぢゃあるまいし、そんな吸い物とか椀物とかややこしいコトを言わないのなら、氷水から干し椎茸と昆布漬けといて、あとは丁寧に割いた煮干しとかつお節を適宜入れて、これまた焦らず煮出せば、煮物類には極上の出汁が取れる。ちなみにおれは自分でカレー作る時、こうして取った濃い出汁を使うようにしてる。いやいやいやいや、ムリに和風を意識してるワケぢゃない。ただもう郷愁である。ただただ自分の中に幼少期のカレーうどんの味の記憶が強く刻まれちゃってるからだ。何か洋風のフォンドボーとかより馴染むんですわ。それで結果的には、最近大阪で流行ってるとかゆうスパイスカレーに近くなってるかも知れない。
 でも自慢ぢゃないけど・・・・・・って自慢なんだが(笑)、おれが作るのムチャクチャに美味い・・・・・・って、それはともかくカレーに負けない力強さとクセが必要なんで、鰹節についてはだから厚削りの方ばっかしだ。いずれにせよ残ったガラは刻んで佃煮にしちゃうんでまったく無駄もない・・・・・・どころか消費が追い付かなくなっていつもヨメに怒られてんだけどね(笑)。

 上記のカツオと昆布を基本とする出汁だって、そらもぉ難しいこと言い出せばキリがないくらいマニアックな方向に行こうと思えば行けるんだろう。枕崎の本枯れ節がどーたらとか利尻の最上級の昆布がへーたらとか煮干しは白だとか青だとか、いくらでもヲタクなノーガキは並べられる。技法にしたって有名な北大路魯山人の「引き抜き昆布」ぢゃないけど、繊細で鋭敏、常人離れした味覚を心底満足させるには、余人には理解しがたい手間ヒマを要したりするモンだ。
 しかしタバコも吸えば激辛もバンバン食べて、大概味蕾を麻痺させてるおれに、そこまで細かい味の差異は分かりようもない。だからある程度チャンとしてればOKなのである。まぁかなりアバウト、っちゅうこっちゃね。

 巣ごもり需要っちゅうんですか、降って湧いたような災厄のコロナ禍も悪いことばっかしではなく、家でチャンと料理する人が増え、それでキチンと出汁取る人まで増えてるってな話題を先日TVでやってた。乾物屋はウハウハらしい。理由はともあれ料理に興味を持つ人が増えるのは喜ばしいことだと思う。どれだけ手間ヒマが掛かってるのか、如何に日本人はそうした手間ヒマに金払わなくなってるかに気付くことも増えるだろうし。
 今日はそんなんで自分の普段やってることを整理してみたんで、何か参考になればって思いながら書くことにします。

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 まず、出汁の基本の取り方と言われる水から昆布を入れといて、沸く前に昆布を引上げ、沸いたらカツオ節をブワーッと入れて火を止めるっちゅう方法。一番出汁、ちゅうやっちゃね。もちろん長い暮らしの中で確立されてきたものであり、間違ってるとは言わないけど、実は濃い味の料理にはちょっと弱々しかったりするように思う。
 だから二番出汁なんてモンがあったりもするんだが、これはこれでやはり絞りカスの再利用っちゅうか、も一つ華に乏しいっちゅうか、いささか味的にパッとしない。だからこそちょっとカツオを最後に足したりして何とか誤魔化そうとするワケだ。
 そもそも出汁って何やねん?っちゅうたら旨味成分を引き出したスープで、料理の食材や味付けに奥行きを与えるモンだろう。だから旨味はキッチリあってもそれぞれの素材のクセがあんまし出しゃばり過ぎちゃ宜しくない。昆布や椎茸なんかまさにそんなタイプだと思う。

 あれこれ調べたり工夫したりした結果、おれは次のような出汁の取り方してる。

 まず使うのは厚削りの鰹節、煮干し、昆布、干し椎茸。どれもフツーにスーパーで売ってるヤツ。鰹節と煮干しは半球型の丸い金属メッシュの籠に入れるんで、前者は適当にポキポキ割って、後者は頭とはらわた取って半割りにする。分量としては出来上がりの出汁重量の4%を目安に、2リッターの出汁なら合わせて80gってなカンジ。魚系とそれ以外は3:1くらいにしてるんで、カツオと煮干しが30gづつ、昆布と椎茸が10gづつ、ってトコだけど、実際はかなり適当だったりする。饂飩・蕎麦なんかは全体量増やすと共にカツオの割合増やして他を減らすとか、ホンマ大体なんやけどね。
 そしてそれを大量の氷と一緒に圧力鍋に漬けてしまう。一晩くらい放って置いたらそれだけでもかなりな出汁が出るし上品だったりもするが、ちょっと生しいんで、こっからユックリ温めて行く。コツはとにかく焦らずユックリだ。出来れば温度計があるとより良いんだけど、要するに沸騰しない程度まで温めて行く。温度で言えば7~80℃くらいかなぁ?そしたら昆布を取り出す。もちょっとしたら椎茸も取り出す。そいでもってアク取ったりした後に圧かけて15分くらい煮込む。それで完成。あくまでおれの感覚なんだけど、カツオと煮干しは一度チャンと煮立たせた方が生臭さが薄れるように思う。ただ、あまりに長時間沸騰させすぎると苦味・エグ味みたいなんが出て来るんで、程度モンだろうが・・・・・・こうして文字に起こすとエラくめんどくさそうに見えるけど、実際はそんなでもない。材料放り込んで後はたまに様子見るだけだし。

 これで大体の煮物は拵えることが可能だ。小松菜と薄揚げの煮物みたいな薄味にサッと仕上げるモノだと、この出汁300ccに酒と薄口醤油と砂糖を大さじ1杯づつ。濃い味の煮物だと400ccに2倍量を入れ、さらに砂糖は1.5倍の味醂等に置き換えて煮詰めてく感じかな?醤油も濃口に替えたりするが、その際は気持ち塩を加えたりしてるけど・・・・・・でもまぁあくまで目安ですわ。甘めが似合う煮物はもっと甘くしてるし。煮魚なんかは出汁使わず、日本酒をかなり入れたり、まぁ色々です。
 ただ、目安と目分量は全然違う。料理の味付けって、やはりいっちゃん大事なのはキチンと計量することだと思う。またまた自慢ぢゃないけど・・・・・・ってやっぱし自慢なんだが(笑)、おらぁ計量スプーンだけで大・中・小3本を3種類、カップも大小合わせて4つ使ってる。秤やキッチンタイマーも必需品だ。そうして信頼できる先達のレシピをまずはつべこべ言わず厳密に軽量して作ってから、2回目以降は少しづつ修正するようにしてる。特に塩味なんて、「小さじ1っ」ちゅうてもけっこうビミョーに変わるんで、そこは現物合わせ、っちゅうこっちゃね。

 でもぶっちゃけ、基本の出汁がシッカリ利いてさえいれば、味付けはそこまで厳密に拘らなくてもそれなりに仕上がったりするモンぢゃないのかな?

 他に良く作るのは叉焼・・・・・・っちゅうか煮豚やね。この時できる副産物のスープが美味い。入れるのは基本のネギ・ニンニク・生姜なんだけど、おれはそこに鷹の爪・黒コショウ・花椒・八角を加えるようにしてる。あと、酒は日本酒とワインを半々にしてるかな?シッカリ焼き固めた豚のブロック肉とこれらを圧力鍋に入れて20分くらい煮ればベースは出来る。煮豚そのものはそっからさらに醤油や味醂・酒・砂糖で味付けして行くんだけど、残ったスープは綺麗に越して塩でも醤油でも加えればラーメンに転用できる。そのままでは一味足りない、っちゅうんなら上記の出汁と合わせるとよりそれらしくなる・・・・・・ただ、花椒と八角が入ってるんで、いささか台湾テイストなカンジではあるが。特に八角はかなり好き嫌いの分かれる香りが付くし、苦手な人は省いても全然構わないだろう。
 鶏ガラや鶏手羽買って、より本格的な清湯や白湯スープ作ることもあるが、まぁそれなら外食しちゃうかな?豚皮や豚骨までは家ではやらない。ナンボ換気扇回しても強烈に室内が臭くなるし。

 洋風のブイヨンも試したことがない。何故ならあんまし興味が無いからだ。良く出来たコンソメとかたまに食する機会にあずかるコトがあって、そらもちろん「美味いなぁ~」とは思うものの、だから家で自分で頑張ってみようって気には今のところならない。多分、おらぁ和食党、っちゅうよりは乾物から出る出汁が好きなんだろう。

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 こうしてツラツラ書き連ねると、あるいは人によっては「いやぁ~、ずいぶん丁寧な暮らしを実践されてんですねぇ」なんてイヤミ半分で言うかもしれない。実際言われたこともある。

 でもおらぁ「丁寧な暮らし」ってコトバが虫唾が走るほど大嫌いだし、そんなしょうもない実際流行ってるのかどうかさえ怪しいことに血道を上げてるツモリもない。実は拘ってるワケでもない。ただただワガママであり、物好きであり、何となく子供の頃から料理するのが好きで、こうした方が結局安くて美味くて愉しいからに過ぎない。つまりはちょとだけ実用性のある道楽の一環なのである。大体、洗濯するワケでもなく掃除機掛けるワケでもなく針仕事をするワケでもなく、家のあちこちの手入れに余念がないとかでもない。料理以外の家事全般には自分でも呆れるほど無頓着なんだし。

 大体、丁寧もクソも、出汁取って料理拵えるなんて、ホンの50年ほど前まではどこの家でもフツーに毎日、それこそ味噌汁の出汁なんてウンザリするほど来る日も来る日もやってたことなのだ・・・・・・飽き飽きしながら。おれだって毎日やれ、っちゅわれたらイヤだろう。まぁ、不便を敢えて愉しむ、っちゅう点では野宿とかに近いのかもね、料理作りって。

 むつかしいハナシはともかく、出汁を取るのはそんなにむつかしくないから、みなさんも一度は試してみてくださいな。絶対に美味い思いますよ・・・・・・あ、旨味だから「旨い」か(笑)。

2021.04.05

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